アスペルガーの息子と暮らして
如月 女性 パートタイム
息子は現在39才になります。息子が子供だった頃にはアスペルガーという言葉すら認知されていない状況でした。ですから、私も周りの方も、変わった子供だなあ、手のかかる子供だなあと首をかしげながらも適切な対応ができずにいました。
変わった子供ということでまず思い出すのは息子が三才の時の出来事です。息子を叱る時に「そんな子はうちの子ではありません。」と言ったのです。私の予想では、ここまで言われたら泣いて謝るだろうと考えました。しかし息子の行動は全く意外なものでした。幼稚園にも入っていない年令ですのに、黙って家から出て行ったのです。私が気付いた時には通りの先をすでに曲がろうとしていました。
このように予想外な言動をすることから何度もいじめられました。Tシャツの袖を切り裂かれたり、石をぶつけられたりと言ったこともありました。
しかし、いじめてくる人間以上に、優しく接して下さる大人や友人に恵まれ明るい少年時代を過ごしました。
つまずきは、大学入学と共に訪れました。友人とも変わらず遊び、コンビニでのバイトも問題なく出来るのに、大学の授業に参加できないのです。
そのような状況を何年も続けて結局大学を中退しました。大学を中退するまでの数年間で、彼は自分に自信を失っていったようです。不運なことにアルバイト先のコンビニが閉店になると、ほとんどの時間をベッドで過ごすようになりました。時々新たなアルバイトを捜して来て始めるのですが、うまくいかず、失敗体験を重ねる中で、ますますベッドにいる時間を増やしてしまいました。
今、アラフォーと呼ばれる年令になっても彼の暮らしは変わりません。絶望感と共にベッドの上にいます。
今にして思えば、彼に自信を失わせたのは、大学に通えないこと以上に私の叱責であったと思います。なんで行けないのかと何度も詰問しました。うまく説明できないという彼に、心の中にあることをそのまま素直に話しないと叱責しました。彼が大学に行けなかったのは、時間割を自分で作ることができない為だった。素直に話さないのは、話せないからだった。
私にアスペルガー障害への知識があったなら、叱責を繰り返して彼の自信を打ち砕くことがなかったのではないかと悔やまれます。
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