大人のアスペルガーと働いた時のこと
プロフィール: あゆきさん、48歳女性、パート
数年前、パートで働く旅館に大卒男子が入社してきました。
彼の名は仮にTくんとしましょう。小さい規模の旅館なので、フロントの業務はチェックインチェックアウト、電話対応、予約の入力、駐車場の案内と多岐にわたります。Tくんが働き始めてすぐに、「新入社員だから」ということ以上に多くの問題が見受けられました。
例えば、お客様からフロントに問い合わせがあった時のことです。
「大きなサイズの浴衣はありますか?」
この問いにTくんは「あります」と答えて受話器を置いてしまいました。他にも一度に複数の用件を頼むと、必ず全てが成し遂げられないのです。当時のフロントの責任者はあいにく話が長い人でした。度重なるTくんの失敗に、くどくどお説教したところTくんが白目になっていることに気づきました。もちろん更にお説教が長くなったことは言うまでもありません。
私もTくんが時々白目になっていることに気づいていました。そこでどうして白目になるのか聞いたところ「パニックになりそうになった時、視界を閉ざすと落ち着けるから」と答えました。彼は彼なりに精神の安定を図っていたようなのですが、時と場合にふさわしくない行いだと言うことにはまったく気づいていなかったようです。
またスタッフの中に、母親が幼稚園の園長先生をやっている人がいました。
娘の職場見学を兼ねて、知り合いと泊まりに来たのですがその時娘から聞いていたTくんの様子を観察したんだそうです。そして帰宅後断言したんだそうです。「彼はアスペルガーね」
実は私にもアスペルガーの傾向のある子どもがいたので、Tくんは大人になるまで一度も診断をされていないアスペルガーなのではとのひそかに思っていました。
一般的にアスペルガーの人は臨機応変が苦手と言われています。旅館のフロントの仕事はマニュアル通りにいかないことのほうが多く、まさに臨機応変が必要とされる職種です。よりによって、アスペルガーの傾向の人が一番苦手な職種についてしまうとは・・・
一方でTくんはパソコンの入力が非常に得意でした。面倒くさいメールアドレスの入力も苦も無くやり遂げました。もし大きな旅館だったら予約の入力だけをやることもできたと思うのですが、私の働く旅館はそれほど予約の件数も多くはありませんでした。そのためその他の仕事もしなくてはならず、Tくんはミスをし続けました。社長もフロントの職種は彼には無理だと判断し、どこの部署だったら使えるのかを試していきました。
食事係はフロント以上に臨機応変が求められ、内務の仕事は短時間に複数の仕事をこなさなくてはならず、どちらの部署でも「いると仕事が増える」と社長に報告がなされました。結局Tくんんは調理場を試された後、自分から辞めてしまいました。
その後風のうわさで大きなホテルの用度の仕事についたそうです。
用度は各部署から頼まれた備品を倉庫から出したり、発注された品物を倉庫にしまったり臨機応変がいらない仕事とのことで、Tくんを知ってる人はみな「彼に合っている」と口をそろえました。私はTくんを通して、「自分の得意なことが何か」を見つけることがアスペルガーの人には大切だと思いました。
もし、Tくんがもっと早くにパソコン入力が得意だと気付いていたら・・・
あんなに他の従業員に怒られながら仕事を続けることもなかったように思います。
パソコン入力を主にする職場では、黙々と仕事をして、その集中力に周りに感心されたことでしょう。またそのためにも、できるだけ早く周囲の大人がアスペルガーなどの傾向に気づいて適切な対応をすることが必要ではないかと強く思った出来事でした。
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