見通しをつけることを第一に
プロフィール: A.Oさん、35歳女性、主婦
息子が幼稚園年少の時にアスペルガー症候群の診断を受けました。
小さな時から変わっているとは思っていたのですが、成長とともにかんしゃくとパニックがひどくなり公共機関に相談しました。それから私は必死に勉強して、息子が将来一般社会で暮らしていけるように努めています。目先のことを解決することと、将来的に予測される事態に向けてトレーニングしていくことの二本立てで行っています。
当時、目先のことを解決するために優先すべきことは、先の見通しを立ててあげることでした。一般的には言語の遅れはないと言われていますが、実際に臨床現場の人間や家族は言語の遅れを感じることがほとんどだと言われているのが現状です。息子もやはり発語も遅く、言語指示も通じにくく、理解力も低い子供でした。
そんな子供に見通しを立てて安心させ、パニックやかんしゃくを治めるのは本当に大変です。毎日同じことの繰り返しであることも、年齢が低ければ低いほど見通しを立てることは難しく幼稚園の送迎だけでも大変な騒ぎでした。直前にこれからのことを説明してもパニックになるだけですので、「このTV番組が終わったら」とか時計の針を指さし、「長い針がここにきたら」と事前予告で知らせます。知らせた所ですんなりいきませんが、その繰り返しで定着させるしかありませんでした。
幼稚園に着くころには、「着いたら車から降りて幼稚園に行くんだよ。」と説明したりとにかく先回りで伝えます。言語性優位の人と視覚性優位の人で対処は若干異なりますが、言葉で伝え、絵や文字でも示して両方で説明しておくのが確実です。まだ文字が読めない子供には絵を書いて、矢印を書いて、絵を書いて、というようにストーリーを書きました。見通しをつける癖をつけてあげると、小学生になる頃には自分で先のことを予測したり、考えたりできるようになってきます。
育てている時は必死で、時には目の前が真っ暗なように感じます。しかし、その子なりに確実に成長しています。振り返ると「あの頃に比べればだいぶマシ。」と思えます。先のことがわからず不安で、不安の表現の仕方がわからず暴れたり、泣いたり、噛んだり、自傷・他傷行為に及んだり、その子によって表現方法は違いますが言語表現力の低さから起こる行為がほとんどです。まずは、「不安なんだね。」と同調して安心させてあげ、親子の愛着形成に努めると徐々にですが改善されると思います。うまく自分では表現できない自分の気持ちを、代弁してあげると落ち着くこともあります。
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