アスペルガー症候群 記憶力

アスペルガー症候群の記憶力

アスペルガー症候群の記憶力

アスペルガー症候群の特徴の一つに「優れた記憶力」があります。図鑑に載っている昆虫の名前を全て言える、電車の細かい特徴を部品レベルまで覚えている、確認できている惑星の名前を全て知っている、などがあります。その他にも、研究者と呼ばれる方々の中には、アスペルガーらしき優れた記憶力を持っている人が多数います。

 

アスペルガーの記憶のシステムは、定型とは異なります。定型の場合、「りんご」という言葉を覚えるためには、リンゴの実物をイメージしたり、「赤い」などの、食べ物や鑑賞物としての「りんご」の意味づけがなされ、同時に音声も交えて、「りんご」という言葉を覚えます。

 

しかし、アスペルガーの場合はりんごの実物を見せて単語を教えても、物体のりんごと言語の関連が理解できず、「りんご」という言葉だけを意味も無く覚えていたり、物体の「りんご」を含む状況ごと覚えています。図鑑から覚える時には、りんごの絵と単語と説明文やページ数までが、ページ丸ごと、まるで写真を撮るように頭の中に焼きつけられているのです。

 

膨大な記憶とコミュニケーション

頭の中に焼き付けるように機械的に覚えているのが、アスペルガーの記憶の特徴です。その記憶は情報としても頭の中で整理されているため、必要な時にすぐに引き出せます。

 

引き出せるのはいいのですが、例えば、「りんご」という言葉だけを思い出すことを求められている時でも、図鑑の「りんご」を図鑑のページごと思い出してしまいます。そして「りんご」という言葉だけを言えば済むときに、「『りんご』だよ。同じページにオレンジも載っていたよ」などという余計な情報も言ってしまって、場を混乱させることがあります。

 

以上はシンプル化した説明ですが、それが複雑化した上で、会話の場が会議の場であったり、何かの説明であったりすると、集団コミュニケーションの流れが変わってしまいます。そして、「天才だけど話が分からない」ということになります。

 

記憶と研究

アスペルガーの記憶力は研究の分野で特に生かされます。記憶の仕方も独特で感性も独特ですから、突飛な発想で研究を進めることが可能です。また、好きなことは突き詰めてやりますから、大きな功績を残すことになります。ただ、チームでの研究の場合は、同じ特性を持つ人が多いグループか、スタッフの理解が無いと、チームワークを乱してしまい、研究が進まなくなることもあります。

 

記憶によるトラブル

アスペルガーの特徴に「記憶のフラッシュバック」があります。昔あった出来事を不意に思い出して、急に怒ったり、攻撃的になることです。記憶力が優れているために、ちょっとした刺激で、集団に馴染めなかったこと、出来なかったこと、いじめられたことなどが、克明に思い出されて、ネガティブな感情に激しく襲われます。

 

意識して止められるものではありませんが、周囲の人が驚くので、怒ってしまった後は「昔の嫌なことを急に思い出して、嫌な気持ちになった」と言いましょう。マニュアル化した定型文で決めておけば、すぐに言えます。

 

定型発達の人も、嫌な記憶を急に思い出すことはあります。アスペルガーほど激しい感情を呼び起こしたりしないだけなので、説明すれば、嫌な記憶で嫌な気持ちになったのだということを理解してくれます。

 

脳機能が違う

記憶のシステムの違い、感性の違い、行動様式の違い、など、定型発達と言われる人達は、アスペルガーとは異なる脳機能を持っています。その脳機能の違いに気が付かないまま、定型もアスペルガーも、お互いが全く同じ人間であり、全く同じ行動をすると思うこと自体が、トラブルの元です。

 

優れた記憶力も使い方次第で、誰かの役に立ったり、自分を傷つける元になります。せっかく優れた記憶力を持っているのですから、定型に合わせた社会性を身に付けて、才能を生かしましょう。

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